男性にも女性と同じように、更年期になると心身の不調が出てくる更年期障害が起こります。
男性の更年期障害の症状としてはうつ傾向になることが多いとされています。
男性更年期障害の概念は、1939年、アメリカのオーギュスト・ウェルナー氏によって、初めて提唱されましたが、この概念は長い間「想像上の産物」と見なされてきました。
男性の更年期障害とは?
女性の更年期には「閉経」というきっかけがあり、ドラマテイックな女性ホルモンの低下があって、「子供を産めない」時期になったとはっきりと分かるのに対して、男性では、テストステロンという睾丸で作られる男性ホルモンの低下が徐々にしか起こらず、性機能の衰えがゆるやかであるため、どの時点を「更年期」と呼ぶのか、はっきりしなかったからです。
また、その後提唱された「ミッドライフ・クライシス(中高年の位機)」の概念と混同されたことも、男性更年期の研究の足枷となりました。
日本ではどうでしょうか。「男性更年期」の概念は、やっと少しずつ認められてきたというのが現状です。
テストステロンの減少が原因
男らしさを保つテストステロンの分泌は、45歳から50歳前後にかけて徐々に減少するため、脳下垂体からの性腺刺激ホルモンが過剰になり、フイードバック機構が働いて、コントロールセンターの視床下部に混乱が起こります。
女性と同じように、この視床下部では自律神経系のコントロールが行われているので、いわゆる自律神経失調のさまざまな症状……疲労感、不眠、頭痛、肩凝り、鬱状態、不安感などが起こってくるといわれています。
また、性欲の減退、勃起不全(ED)に人知れず悩まされるようになるのです。
実際、このような訴えを持つ男性の何パーセントかは、テストステロンの活性型であるフリーテス卜ステロンを測定すると、かなり低下している場合があり、少量のテストステロン製剤を投与することで、症状の改善が得られるといいます。
男性更年期はうつ傾向が強い
男性の更年期障害のほとんどは、ストレスによってもたらされるといわれます。
フランスの生理学者セリエによれば、ストレスとは「ひずみ」を意味し、いろいろな原因で身体の恒常性が乱れたとき、ストレス状態になると定義しています。
ストレスを引き起こす因子には、騒音、寒冷、暑さなどの物理的なもの、酸素欠乏、炭酸ガス、種々の薬剤などの化学的なもの、細菌感染などの生物学的なものがあり、わけても悲しみや痛みといった精神的因子が問題となります。
ストレスの多い男性の更年期
特に、40代後半から50代の男性では、責任の重い中間管理職の重圧に加えて、両親との死別、子供の受験や就職など、さまざまな難問や悲哀がふりかかってくる時期いえます。
更年期世代の男性たちは、数多くのストレスに晒されています。
現代社会では、いまだかってない変革の時代を迎え、コンピュータ管理、情報の氾濫、不景気、年功序列制の見直し、終身雇用制度の撒廃、さらにはリストラといった不安材料が整いすぎているからです。
努力が報われないまま、給料は下がる一方だったり、後進に役職を奪われる人もいるでしょう。たとえ、仕事で成功していても、これがピークでいつまで続けられるのか、不安に思う人もいるでしょう。
また、体力や精神力の低下を感じ、自分と同世代の友人や知人が病気になったり、亡くなるのを見聞きすると、喪失感、先行きの不安を抱くようになる。日々現れる老化の兆しに加えて、生理機能の低下からくるストレスに対する不適応もストレスを助長してしまいます。
こういったストレスが強い状態が長時間続くと、女性更年期で見られるのと同じように、視床下部からの指令が乱れ自律神経失調状態になると考えられています。
この時期の男性に認められるのは、疲労感、躁うつ、不安感、睡眠陣害、性欲の低下などの精神神経症状、のぼせ・ほてり、手足の冷えなどの血管運動神経症状、頭痛、めまい、耳鳴りなどの感覚器症状と多彩であり、まさに女性の更年期陣害の諸症状に酷似しているのですが、違うのは女性よりもうつ傾向が強いことで、自殺を図る人が少なくありません。
ストレスの過剰は過労死や突然死をもたらすばかりでなく、50代男性の自殺者を急増させています。