更年期世代で、気持ちが落ち込む、集中できない、仕事も家事も人間関係も何もかもがおっくう、将来のことを考えると不安でたまらない、夜眠れない、体もだるい。
そんな心の不調を抱えていませんか?
これらは全部、「うつ」の症状です。更年期は心の状態も不安定になる時期で、実際うつになる人がとても多いのです。
うつ患者の半分は更年期の女性
精神科を受診するうつ患者さんの半分くらいは更年期の女性です。もともと女性は男性よりうつになる人が多いのですが、更年期は特に増えます。 更年期だけに限ると、女性のうつは男 性の8倍にも上るという米国の報告もあります。
更年期のおよそ3人に1人が、「気分の落ち込み」「イライラ」「眠りの浅さ」に悩んでいるといいます。女性ホルモンのエストロゲンが減少する更年期は、 体たけでなく、心も摇らぐ時期なのです。
エストロゲンが減るだけで、意欲が低下したり、不安が強くなったりして、 うつっぽくなる症状が出る人もいます。また50歳前後は仕事や家庭などでも、うつの引き金になるようなストレスが多くなる時期です。体の変化と人生の様々な出来事が複雑に重なり、精神的にまいってしまいやすいのです。ちょっとした気分の落ち込みから本格的なうつまで、いろいろな症状の方がいます。
あなたを悩みも、もしかしたら「更年期うつ」が原因かもしれません。更年期うつと上手に付き合う方法をご紹介します。
更年期うつの症状
女性の人生において、うつがぐっと身近になる時期、それが更年期。女性ホルモンの減少は、心にも大きな影響を及ぼします。エストロゲンが減ると、セロトニンなど脳内で働く神経伝達物質もうまく働かなくなります。
セロトニンは認知機能やうつなどと関係が深いですから、エストロゲンの低下が一時的な物忘れや気分の落ち込み、睡眠障害などを引き起こすことも珍しくありません。
「家庭の問題」と「女性ホルモンの減少」のダブルパンチ
また、この時期は子どもの進学や巣立ち、夫婦関係のきしみ、仕事の行き詰まり、親の介護などとかく家庭や職場での悩みも多くなりがちです。若いころよりエネルギーが落ちているにもかかわらず、やらなければならないことは増え、しかもその中身も一筋縄ではいかないものが多くなります。
1つ2つならまた耐えることもできますが、3つも4つもと重なってくると、もう耐えられなくなり、うつに陥ってしまいます。女性ホルモンの減少という生理的変化に社会心理的な理由が重なり、うつを発症しやすくなるのです。
月経周期に伴って心が揺れる
なかでも心の不調が現れやすいのが、閉経前の時期(プレ更年期)だといいます。40代半ばから閉経までの5年くらいの間は、気持ちの落ち込みや不安などの気分失調の症状が特に出やすい時期です。月経の2、3日前になると精神的に落ち込んでつらくなる人が多いようです。
この時期は、全体的に見るとエストロゲンが減少しているのですが、月経周期に連動して増えたり減ったりという乱高下を繰り返しています 。この女性ホ ルモンの不安定な変動が、気分失調を招くと考えられます。
あなたの心も月経周期に伴って揺れ動いてはいませんか?もしそうなら女性ホルモンの影響を大きく受けているといえそうです。
ホルモンと無関係の「本格うつ」の症状もある
ただし、注意したいのは、この時期のうつの症状すベてが女性ホルモンの減少に端を発しているとは限らないということです。
更年期のうつ気分は、女性ホルモンの変動に伴う「一過性の気分変調」ですが、実はこの中には女性ホルモンとは関係のない「本格的なうつ病」も含まれています。
それらを見分けることは非常に難しく、実際には両者が重なっていることもあります。
つらいのは更年期の間だけだからと我慢していて、うつを悪化させてしまったケースもあるので要注意です。
女性ホルモンとは関係のない本当のうつ病なのに、それを認めたくない、更年期と思いたい、という人もいます。気持ちは分かりますが、この場合、適切な治療なしには元気になれないので精神科できちんと治療を受けるべきです。
うつ病は誰もがかかる可能性のある身近な病気ですが、症状が重くなると仕事や家庭などの日常生活にも支障を来し、 最悪の場合は「死にたい」と思いつめるようになります。実際、自殺する人も少なくありません。このような「命にかかわるうつ」は、言うまでもなく、 精神科での適切な治療が不可欠です。
更年期のうつには、このような重い症状のうつ病も含まれますが、今回、その対応策を紹介するのは、比較的軽いうつです。気分の落ち込みや体の不調、睡眠の質の低下などが主な症状です。
あなたの今の心の状態はどうでしょうか?まずは下のチェック表で確認してみましょう。
うつの症状チェック表
更年期うつの症状
- やる気が起きない、集中できない
- イライラしたり、人にあたりやすくなった
- 理由もなく不安になったり、涙が出たりする
- 好きなことをしていても、 楽しくなくなった
- 自分なんていなくてもいいと思う
- 耳鳴り、めまい、頭痛などがするようになった
- 疲れやすい
- 急激にやせた、または太った
- 寝つきが悪い
- 夜中や朝早く目が覚める
- 日中、眠い
- 食欲が異常にある
- 甘いものやお酒、たばこの摂取量が極端に増えた
- 食欲がない
以上の症状に当てはまるものがあれば、更年期うつの可能性があります。
深刻なうつの症状
- 死にたいと思う
- 会社に行けない、ご飯が作れないなど仕事や家事などが社会生活が営めない
以上の重い症状に当てはまるものがあれば、深刻なうつの可能性があります。命にかかわる場合があるので、すぐにでも精神科を受診しましょう。
更年期うつの治療法
不安、悲しさ、恐れ、無力感、焦燥感、自己嫌悪。うつに陥ると、ネガティブな感情が津波のように押し寄せてきます。どうして、こんな思いをしなければならないの?
そもそも、このつらさにどんな意味があるの?そんなふうに考えている人も多いでしょう。
動物もうつになる
うつの意味については、動物の例を考えると分かりやすいかもしれません。実は動物もうつに陥りますが、それには生物学的な意味がちゃんとあるのです。
例えば、ボスの座を追われたサルは、 まるでうつ病のように元気がなくなるといいます。これには環境が激変した中、憂うつや悲しみの感情を持つことで、「争いを避け」「周囲からの援助を引き出し」「新たな生き方を導く (再適応)」という意味があると考えられています。いわば、うつの効用です。
人間の場合も、今までやってきたことに限界が生じたり、人生観が揺らいだりしたとき、うつになることが多いものです。これは考えようによっては、 人生を見直すチャンスだともいえま す。
もちろん、自殺を考えるような深刻なうつ病は別ですが、ちょっとしたうつなら、むしろ味方につけたほうが良いということです。うつを肯定的にとらえる視点も大切だと思います。
そこで知っておきたいのが、「トンネル」内での過ごし方と抜け出し方です。
焦ると空回りするだけなので、 受け身で時期を待つくらいのスタンスがちょうどいい。少しくらい憂うつでもいい、と考えてみてはどうでしようか。白黒つけず、アバウトに構えておくことも大切です。
もちろん、治療が必要な症状がでた場合は心療内科や精神科、あるいは婦人科の受診をおすすめします。
それと同時に、心に効くセルフケアもおすすめです。重症でなければ、まずは2、3力月、セルフケアをしてみて、それでも気持ちが晴れないときは医療機関の受診をしましょう。
それでは以下で、具体的なセルフケアについて、または病院での治療法をご紹介します。
アロマテラピーで治療
うつ気分の改善に役立てたいのがアロマ。うつっぽい気分を香りで緩和できるのがアロマテラピ—です。
更年期外来でも活用されています。香りをかぐだけで、気持ちが落ち着いたり、華やいだ気分になったり……。 香りは嗅覚を通して、脳を直接刺激します。また、花や木の芳香成分を抽出した精油には、植物自体が持ついろいろな薬効も期待できます。
アロマは更年期の身体症状にも効きますが、心の症状により効果を発揮するようです。研究によると、ラベンダー、ベルガモット、ローマンカモミール、ロ—ズ、イランイランなどが、 抑うつ不安などの心の症状に効果があったことが分かっています。使い方は、ティッシュに数滴垂らして香りを吸い込んでもいいし、ベースオイルに混ぜて、腕などをマッサージするのもいいです。
マッサージオイルの作り方
ベースオイル(ホホバオイルなど)10mlに対し、精油2滴を混ぜる。
時間がたつと酸化するので、早目に使い切るのがべター。香りを楽しみながら、腕や脚などに塗ってマッサ—ジをしましょう。
バッチフラワーレメディで治療
花の力で心を癒やす英国生まれの自然療法バッチフラワーレメディ。不安や恐れ、無力感などネガテイブな感情を改善します。
英国の医師、エドワ—ドバッチ博士が70年前に作り出した自然療法が、バッチフラワーレメディ。英国やドイツなど60ヵ国以上で使用され、日本でも利用者が増えています。
レメディの中身は、天然水に花を浮かべ、太陽の光を当てただけの液体。 そこに、花のエネルギーが転写されていると考えられています(保存料としてグリセリンやブランデーが使われて います)。
この液体を数滴飲んだり、塗ったり、スプレーしたりすることで、 厄介な感情が薄らぎ、前向きな気持ちを取り戻せるというのだから不思議。 なぜ効くのかは分かっていませんが、「恐怖心が和らいだ」「否定的な感情が消えた」などの声は多く、医療機関やカウンセリングの場でも活用するというところが増えているのです。
バッチフラワーレメディは全部で38種類。自身がないときは「ラーチ」、憂うつなときは「マスタード」など、それぞれの感情に応じたレメディがあるので、そのときの気持ちに合ったものを7種類まで選びます。
それを1日数回、直接1、2滴をのんだり、飲み物に溶かしてのんだりすると、多くの場合、4〜6週間程度で、気にしていた嫌な感情が薄れてくるなど、何らかの変化が表れるといいます。
また、急なストレスやショックなどで心が動揺したときに使う緊急用とし て、五つのレメディをミックスした 「レスキューレメディ」などもあります。
バッチフラワーレメディは、ネット通販のほか、東急ハンズなどでも購入ができます。
ときめく心で改善
「韓国ドラマにはまって、うつが治った」「ジャニーズ系アイドルに熱中して、元気になった」、はたまた「阪神タイガースのファンになったら、長年のうつが消えた」。
これらは実際にあった話です。ドキドキしたり、ワクワクしたりしているとき、脳の中ではドーパミンという、快感ややる気に関わる物質が増加します。喜びの感情に満たされ、脳全体が活性化しています。ときめき体験には、不安やうつ気分を遠ざける強力なパワーがあるのです。
ときめきの対象は、アイドルでもスポーツでも趣味でも何でもOK。 生きている実感をひしひしと感じられる「ときめく心」を持つことで喜びに満たされ、脳も活性化。生きている実感が得られます。
運動で治療
体を動かすと、気分も晴れます。適度な運動でうつを遠ざけましょう。
運動には気持ちを上向きにし、うつを改善する働きがあります。特におすすめなのが、ウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動。体を動かすと脳や全身の血流がよくなり脳内 で、気持ちを落ち着けるセロトニンという物質も増加します。
また、運動をすると肉体的な疲労から、夜もぐっすり眠れるようになります。ただし、疲れすぎるほどの激しい運動は避けましよう。
運動習慣と更年期症状との関係を調ベた研究では、40代で適度な運動をしていた女性は、ほとんど運動をしていなかった人や激しい運動をしていた人に比べ、更年期うつになる割合が少なかったと報告されています。
掃除、断捨離で改善
家の中がきれいになれば 、心の中もスッキリします。
部屋の中が汚れて、ものも散らかりっぱなし…。こういうときは、心の中もモヤモヤ、ゴチャゴチャしているもの。家の状態は、心(脳)の状態を投影しているともいわれます。
そこでぜひやってほしいのが掃除、断捨離。部屋を片付け、不要なものを捨てることで体を動かしていくうちに、不安や心配の種もどこかへ。掃除のぞうきんがけのような反復動作は、脳内のセロトニンも増やしてれます。
そして家の中がきれいになれば、気分もスッキリ。達成感も得られ、まさに掃除の効用です。実際、うつ患者に掃除をすすめている精神科医もいるほどです。
漢方薬で治療
漢方には心に効く処方があります。 更年期外来の受診者を対象にした調査では、身体症状よりも精神症状に効果が高かったという報告も。更年期うつの強い味方、それが漢方です。
男性の場合はたいていが本格的なうつですが、女性は更年期がらみのケースが多いです。更年期うつに対してよく使われる漢方薬は、桂枝加竜骨牡蠣湯、加味帰脾湯、補中益気湯などがあります。また、朝鮮人参などもよく飲まれます。
例えば几帳面で頑固、物事を「〜すべき」という思考でとらえがちな人には、桂枝加竜骨牡蠣湯。
心配症で、ちょっとした症状でも「もしや何かの病気?」などと考える先回り不安の強い人には加味帰脾湯。
また長期間、心配し続けてエネルギーがなくなってきた人には、補中益気湯を併用することが多いといいます。
漢方が効き始めると、気分的に落ち着いた、眠れるようになった、体力が午後まで持つようになった、など更年期うつの症状が軽くなったと話す人が多いそうです。
ホルモン補充療法HRTで治療
少なくなった女性ホルモンのエストロゲンを補う治療が、ホルモン補充療法(HRT)。医師の処方薬で、のみ薬、貼り薬、塗り薬があります。のぼせや発汗などのホットフラッシュはもちろん、うつ症状の改善にも効果的です。
抗うつ薬で治療
精神科で抗うつ薬を処方される場合、少量から始めて、徐々に服用量を増やします。
精神科でのうつ治療の中心は、抗うつ薬による薬物療法です。現在、日本で使用されている抗うつ薬のうち第一選択薬とされているのが、SSRI (選択的セロトニン 再取り込み阻害薬)とSNRI(セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬)。これらは脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンの量を増やすことで、うつ症状を治療します。
薬の効果が出るまでには、およそ2週間。約7割の人は最初に処方された薬が効くといわれます。まずは少量から始め、十分に効かない場合は、副作用に気をつけながら服用量を増やした り、薬を切り替えたり、ほかの薬を上乗せしたりします。
治療では抗うつ薬以外にもいろいろな薬を使います。抗不安薬や睡眠導入薬、自律神経調整薬などで症状が改善する人もいます。軽い人ならこれらだけでよくなることもあります。
症状が改善すると、うつが治ったように思いがちですが、ここで薬をやめるとまた悪化するので要注意です。治療にはト—タルで平均1年程度かかります。
3割ほどの患者さんはすんなりよくなりますが、なかかなよくならない人も2割程度いるといいます。もっとも、処方の仕方が適切でないなど、医師側に問題があることもあるので信頼できる専門医の下で治療を受けることが絶対条件です。
これらの薬には副作用もあるので十分に注意しなければなりません。
うつ治療に使われる薬
抗うつ薬(SSRI、SNRI、NaSSA、三環系、四環系)
SSRI SNRIは従来の三環系、四環系抗うつ薬に比べ、使いやすい。ただ、のみ始めの時期に吐き気などの副作用も。
抗不安薬
マイルドな精神安定剤。鎮静作用、催眠作用、筋弛緩作用などがあり、不安や緊張、恐怖感を和らげる。うつやパニック発作、不眠等の症状に使用される。
睡眠導入薬
現在、主に使われているのはベンゾジアゼピン系の薬。眠りに導く催眠作用、気分をほぐす抗不安作用、筋肉の緊張をほぐす筋弛緩作用などがある。
自律神経調整薬
自律神経のバランスが乱れるとのぼせ、発汗、めまい、不眠、気分変調などの症状が現れる。更年期の症状はその代表。自律神経を調整して症状を和らげる薬。
最後に
以上、更年期のうつの症状と治療方法をご紹介しました。
前述しましたが、基本的には、2か月から3か月間は自分でできるセルフケアを行い、それでも改善しなかったら、専門医を受診し、漢方やホルモン補充療法(HRT)、抗うつ剤の処方を受けるという流れをおすすめします。
ただ、もちろん我慢できないほど辛い症状が出ているという状況ならば、すぐにでも病院へ向かいましょう。
人生、40年も50年も生きてきて、悩みや後悔があるのは当たり前。誰でも気分が落ち込む時期はあります。今までの考え方や価値観を一度捨てて、作り直す時期だととらえてみてはいかがでしょうか。
うつのトンネルに入ってしまうと、 先が見えず不安になりますが、必ず出ロはあります。そして抜け出た先には、これまでとは違った自分が見えてくるはずです。
セルフケアの一つとしてサプリメントもおすすめです。
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