多くのうつの専門家が、うつは再発性疾患であると考えています。大うつ病を起こした患者の50～80パーセントは、いったんうまく治癒したあとも再発にみまわれており、いくつかの調査によると抗うつ薬を使った患者の80パーセントが、薬をやめてから三年以内に再発させているといいます。
これは厳しすぎる数字に見えるかもしれないですが、うつが実際にはどんなものかをよく知れば、決してそうではないことがわかると思います。更年期うつについても同様です。
更年期うつは抗うつ薬では治らない
抗うつ薬は、まるでうつが「プロザック不足」だとでもいうように、それだけポンと処方されます。
しかしうつは、ある日唐突に起きたような単純な化学的異常では決してありません。
また人間にとって自然なものでもありません。研究によれば、自然のなかで土着的な生活を営んでいる人たちには、事実上うつが存在しません、更年期うつは私たちの日常の生き方から起きてくるものなのです。
更年期うつを乗りこえるには人生に、脳の健康な化学作用を支えてくれるような何らかの変化を起こさなければなりません。
さもなければ再発をくり返すでしょう。つまり、更年期うつの治癒は、いくら正しい抗うつ薬を飲んでも保証されないことを、私たちは社会としても個人としてももっと理解する必要があると思います。
更年期うつを治すなら自分のうつの原因を探す
心身の症状がすべてそうであるように、うつも体の内なる知恵が、人生にどこか不自然なところがあることをあなたに伝える手段です。
それはあなたのどこかが成長を止めているとか、停滞しているということかもしれないし、生きることの自然な一部である人生への情熱を失ってしまったということかもしれません。
あるいはあなたが誰かに怒りを抱いていて、それを直接的に表現できずにいることをほのめかしているのかもしれません。大切な人と死に別れたりしたときの喪失感や悲しみが、未解決のままになった結果のこともあります。
更年期うつの最良の治療は、自分が何を感じているかについて完全に正直になることです。
嫉妬、怒り、罪悪感、悲しみ、恨みといった隠したい感情にこそ、正直になる。それらの感情は人間であるしるしです。そうした感情があることを率直に認め、安全なかたちで表現し、最終的にはそういう感情をもつ自分をまるごと受け入れてやるなら、それらの感情は決して悪さはしないでしょう。
そして行動を取ることが必要です。
女性の場合、行き詰まった仕事や人間関係をずるずるとつづけていることが、しつこい慢性的なうつを呼ぶ大きな要因になっています。
あるいは、人生の何か重大な喪失について未解決の悲哀を抱えているのが更年期うつの原因のこともあります。
いずれにしてもそういう問題は、どんな抗うつ薬でも、運動でもハーブでも治せません。ただしそうした手段は、私たちが人生の問題と取り組むあいだ、貴重な助けになってはくれます。
抗うつ薬を使うことを考えるとき
- うつが三回以上起きたことがある。
- 軽度のうつ状態に長年につきまとわれてきたうえに、大うつ病も起きた(二重うつ病と呼ばれる)。
- 薬を中止したら症状が残った。
- 中年期かそれ以後に、はじめてうつが起きた。
抗うつ薬は安全？
脳の化学を変える薬剤は何であれ、長く使ううちに副作用が出る傾向があります。
また、今日広く使われている向精神薬、抗うつ薬の多くは、売り出されてから日が浅いため、長く使っても安全であると権威をもって言える人はどこにもいません。
多くの重要な脳内化学物質の受容体をもつ部位が気分に閨与していることを発見した科学者は、SSRIが長期的に使えば心血管に問題を起こす可能性さえあるにもかかわらず、安全性についての研究もなしに、当たり前のように処方されているとして、強い疑問を述べています。
科学者はこのように述べます。
「一般の人たちはプロザックやパキシルやフェンフルラミン(アメリカでフェンフェンという名でも売られているやせ薬)について正確なことを知らされていません。医学の専門家はそれらの脳での働きを単純に考えすぎているし、身体への影響はまるで無視しています。身体は頭をもち運ぶだけの道具だとでもいうように」。
更年期うつで抗うつ薬にだけ頼ってはいけない
抗うつ薬は、人生の特別に荒れた流れを渡るときの橋にすぎないと考えるべきです。渡るときに助けになるが、橋の上に永久に住まおうとしてはなりません。
つまり、これからの人生もずっと抗うつ薬だけに頼って生きていこうとしてはならないということです。
更年期うつのほんとうの治療は、感情を十分に表現して、前向きな行動が取れるようになるまで決してできないということを忘れないでください。