いまの医療では、更年期うつになり病院に行くと、抗うつ薬を使うことがまっ先に提案されます。
精神科や心療内科において、更年期うつの治療は基本的には薬物治療しか選択肢にないからです。
目次
更年期うつに使われる抗うつ薬
ロキシチン(プロザック)、パロキシチン(パキシル)、セルトラリン(ゾロフト)といった人気の抗うつ薬は、一つには脳の神経3達物質であるセロトニンの有効性を高めることによって効果を現すもので、「選択的セロトニン再取りこみ阻害剤(SSRI)」と呼ばれる大きなグループに分類されます。
よく処方されるもう一つのグループは、三環系抗うつ薬と呼ばれ、こちらも更年期うつに効果的な薬として長年使用されています。三環系にはイミブラミン(トフラニール)、アミトリプチリン(エラビル)などがあります。
薬の副作用
これらは効果的な薬ではあるが、抗うつ薬は脳の化学を変える薬の常として、厄介なことになりがちな副作用があることをおぼえておかなければなりません。
プロザックなどのSSRIは吐き気、食欲不振、頭南、神経過敏、不眠、脚がむずむずする、性欲低下、性機能不全などを起こすし、三環系では目のかすみ、目まい、ロが乾く、心拍数の乱れ、便秘、記憶力低下などが起きます。
自分にぐあいのいい使い方を見つけるには、薬剤や用量をいろいろ変えて試すことも必要でしょう。
こうした難点はありますが、気が滅入ってほかにどうすることもできない場合、抗うつ薬を6か月間程度使ってみるという方法は考慮に値すると思います。
更年期うつの悩みを助ける生活習慣
ただ、抗うつ剤の使用は避けたいという方には、やはり、日々の生活習慣を改めるといった方法が更年期うつの治療には役立ちます。
更年期うつ冶療の助けになる生活習慣としてつぎのようなことをおすすめします。
①飲酒をやめる
飲酒は更年期うつをとくに治りにくくします。
一つにはアルコール自体に気分を沈滞させる作用があるからで、もう一つの理由は、多くの女性がアルコールを、感情を抑圧する手段に使っているからです。
②運動の習慣をもつ
運動は脳の化学を変えます。
神経伝達物質のベー夕エンドルフィンを増やし、力テコールアミンを減らし、モノアミンを増やします。有酸素、無酸素のどちらの運動でも、軽度から中度の更年期うつに効果があることが知られています。
運動だけで、うつの患者の50パーセントが治癒したという研究報告もいくつかあるほどです。
一日に20分から30分の運動を週に4,5回行なうようにすると、気分が目に見えてよくなるでしょう。
運動は何でもよく、音楽やラジオに合わせて家のなかを踊りまわるといったことでも効果的です。
③屋外に出て日光を浴びる
これは季節性感情障害(SAD)の治療にとくに効果があり、脳のセロトニンの濃度が自然に上がります。
冬場は人工太陽灯などで十分な光を浴びる工夫も効果があります。
④食事を改善
心身の機能を良好に保つには、脳に適正な濃度のセロトニン、必須脂肪酸、ブドウ糖が供給されることが大切です。
精製した炭水化物を避け、タンパク質を一日に三回以上とり、毎日の食事に健康によい脂肪が必ず含まれるようにします。複合炭水化物を(タンパク質とともに)バランスよく食べることにより、セロトニンの材料の一つであるトリプトファン(必須アミノ酸の1つ)が適正にとれます。
サプリメントや総合ビタミン剤をとるのも効果的です。
⑤カフェインの入った飲料や、精白された砂糖を減らす
カフェインと砂糖が更年期うつの再発に一役買っていることが研究で示唆されています。
砂糖やコーヒーが習慣になっている人は頻度や量を改めましょう。
更年期うつに悩むなら
更年期うつに悩んでも、抗うつ薬の服用はなかなか敷居の高いものです。
抗うつ剤を飲み始める前に、まず生活習慣の改善を一定期間(2~3か月程度)試してみることも一つの手段です。
上記の5つの習慣のうち、出来ていないものがあれば一つ一つ直していきましょう。
更年期うつの悩みを減らしてくれるかもしれません。