更年期障害の正常な症状についてたくさん耳にしてきましたが、そのような症状がほとんど、あるいはまったくないという女性も大勢います。
女性が頻繁に訴える更年期障害の症状は、以下にあげるように多数にのぼります。
読んでいただければ情報も得られるし準備にも役立ち、また特定の症状についての不安も減ると思います。
ただ、自分は更年期にこうなるかもしれない、ああなるかもしれないと心配し過ぎると、そのとおりになることがあります。人間は、自分が信じているとおりになっていくものだからです。あまり、心配し過ぎず読み進めていきましょう。
目次
更年期障害の症状①ほてり
ほてりは、最もありふれた更年期の症状です。更年期の女性の70~85パーセントに現れます。
ごく軽いこともあるが、ひどい場合は睡眠が妨げられ、そこからうつにつながることもあります。
突然力ーッと熱感が走ったかと思うと頭から顔から胸のあたりまで熱くてたまらなくなる。顔が赤くなったり汗が吹きだしたりもするし、心臓がドキドキしたり、手がしびれたり、胸がムカム力することもある。ほてりのあと体が冷えることもある。
ほてりの原因と対策
ほてりが来るのは、更年期のあいだは月経の直前か月経中のことが多いです。エストロゲンの低下とFSH(卵胞刺激ホルモン)の上昇が引き金になるので、月経が実際に止まったあとは、もっとひんぱんになる傾向があります。エストロゲンの濃度が最も低くなり、FSH濃度が最も高くなるときだからです。ふつうは閉経後1,2年でなくなりますが、何年もつづくこともあります。
ほてりは血管運動神経の興奮と言われ、頭部や首の皮膚の血管が拡張されることによって起きます。そこへ血液が殺到して、熱と赤みが生じます。
ほてりの強さや持続の程度は、ホルモンの変動のほかに外的な要因にも左右されます。不安や緊張があれば悪化するし、精白糖や精製した炭水化物の多い食生活(フルーツジュース、ケーキ、クッキー、白いパン、ワイン、ビールなどを多食するような)も悪化の原因になります。
ほてりを鎮める方法は以下のものが有効とされています。
- エストロゲン補充療法
- プロゲステロンスキンクリーム
- 瞑想やリラクゼーション
- 食生活の改善
- 針治療
- サプリメント
ほてりからの寝汗
「びっしょり寝汗をかいて、目が覚めます。寝間着からシャツから全部取りかえるほどです」
寝汗はほてりと連続して起きます。午前3時から4時ごろのことが多いといいます。
更年期障害の症状②動悸
「だしぬけに心臓がドキドキしだすので、びっくりします。いままで心臓のことなど気にしたこどもなかったのに」
ほてりと同様動悸も軽いことも激しいこともあります。心配になりますが、危険なことはめったにありません。
交感神経系と副交感神経系のアンバランスから生じており、ときには不安や恐怖と関連しています。
もし、長く続くときは診察を受けてみましょう。
更年期障害の症状③片頭痛
「40歲になったころから、生理の1日か2日前に頭がズキズキするようになりました。前はそんなこどなかったのに」
更年期や閉経のころにはホルモンのアンバランスから、いわゆる月経片頭痛がはじまることがあります。
片頭痛の対策
たいてい月経直前の、エストロゲンとプロゲステロンが下落するときで、2パーセントのプロゲステロンクリームを使うと、すっかり治ってしまうこともあります。
月経前の2週間、茶さじ4分の1から2分の1を毎日皮膚にすりこむ。月経がない場合は、毎月3週間、同様に使用します。
更年期障害の症状④乳房の張りと痛み
「ときどき乳房がひどく痛くて、子供を抱いたりするときに困るほどてす」
月経前に乳房が張り、さわると痛いほどになるという女性は多いが、更年期に入ると、そういうことがもっと多くなるかもしれません。
エストロゲン優位の女性には、よく見られます。解消に役立つ方法はいくつかあります。
乳房の張りと痛み解消法
- ビタミン6群とEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサへキサエン酸)などのオメガ3脂肪を適正にとる。
- カフェインを断つ
- 2パーセントのプロゲステロンクリームを使う。
- 大豆食品をとる。
更年期障害の症状⑤月経障害
月経過多の症状と対策
「生理がすごく重くなって、タンポンが15分ももちません。いつも用心して、夜用の大型ナプキンも使っていますが、それでも職場で座っていると服にしみ出したり……。」
エストロゲンの濃度が上昇すると、あるいは正常な濃度でも、排卵がないためにプロゲステロンの濃度が低いままになっていれば、エストロゲンは子宮の内側(子宮内膜)に厚い層をつくるという毎日の仕事を何ものにもじゃまされずにつづけていきます。
その増殖した子宮内膜がついに壊れて落ちるのが、何日もつづく重い月経です(無排卵性月経)。
これはやっかいな問題になることがあり(子宮内膜増殖症。前ガン状態になることもある)、子宮を摘除することになる女性もいますが、閉経が近づくにつれ解決することも多いです。
エストロゲンが高いという問題には、種々のプロゲステロンや避妊用ピルで対処できます。
体脂肪がエストロゲンを生産するために肥満の女性は悪化しやすく、その場合は運動と食事療法が効果的でしょう。鍼治療や漢方などの代替療法も効果があります。重症の場合、レーザーで子宮内膜を焼灼する処置もあります。
月経不順の症状と対策
「つぎの生理がいつ来るのかまるでわかりません。ときにはらゃんと来るし、終わって1過間ぐらいのときに、またちょっとあったりもします。3か月以上なかったこともあリます。いつもナプキンを持ち歩いています。」
ホルモンが変動しだすと、月経のパ夕ーンが定まらなくなります。3,4か月もあいだがあいたりするし、ひどく軽く短くなって月経に見えない時もあります。
こうした月経異常はしばらくつづいても、問題はやがて消失するので、ほんとうの意味での異常ではありません。
だが気分の揺れや頭痛などの症状が伴う場合、どうしても規則的にしたいときは、さまざまな治療法があります。
避妊用ピルは以前からよく使われています。代替療法として天然型プロゲステロンのスキンクリームも効果がありますし、チャスタベリーはプロゲステロンの生産を高める作用があります。
更年期障害の症状⑥子宮筋腫
「月経不順でした。婦人科へ定期検診に行ったとき、子宮筋腫だと言われました。超音波検査でも同じ診断でした。様子を見ましょうと言われています」
更年期の女性の約40パーセントが、子宮に良性の腫瘍をもっています。
エストロゲンの刺激で成長し、そうとうな大きさになることもありますが、閉経するとあっという間に退縮してしまいます。
したがって過多月経などと同様、とくに不都合な症状があるのでないかぎり、ふつうは手術などの治療は必要としません。
子宮筋腫の対策
しかし骨盤内の位置によっては大量の出血を招くこともあります。小さなものなら腹腔鏡手術で除去するか、あるいは経膣的に取り除くこともできます。成長したものには、開腹手術が必要になりますが、減量、緘、ハーブ、食生活の改善、天然プロゲステロンなどの代替療法も効果があります。
更年期障害の症状⑦性欲低下
「結婚生活に不満があるわけではあリません。夫を愛しています。でも正直なところ、まったくそういう気分になりません」
性欲が低下したときは、ホルモンの濃度を調べましょう。更年期のあいだにテストステロンの濃度が下がることがあり、性欲の減退につながります。
また、副腎の疲労が原因のこともあります。副腎ホルモンの濃度が低いときは、少量のテストステロンか、その先駆物質であるDHEAを補うと性欲が回復します。
性欲低下の対策
エストロゲンの低下や、膣の組織が薄くなったことが性欲低下の原因のこともあります。卵巣を除去したときや、病気、化学療法、放射線療法などで卵巣の機能が損なわれたときは、正常なホルモンの生産に欠かせない場所が失われているわけですが、その場合にも、大豆イソフラボンを多くとるなどの安全な方法で効果があがることがわかっています。
潤い不足と性交痛
「セックスのときにもう潤わないみたいで、痛くて困ります」
膣の内側と、尿道の出口から三分の一の内側はエストロゲンに作用されやすいです。
したがって更年期にはエストロゲンが不足することにくわえ、泌尿生殖器の筋力低下や、それによる血液循環の低下も重なって、そうした場所に症状が出ることになります。
更年期の最初の兆しが、正常な分泌物の減少である女性は多いです。性的興奮や膣液の分泌に時間がかかるので場合よっては性交時に膣用潤滑剤を使う必要があるかもしれません。
局所用のエストロゲンクリーム、ビタミンEの座薬、全身的なエストロゲン療法、あるいは大豆のような植物エストロゲンをたっぷりとるといったことは、いずれも効果が高いといわれています。
更年期障害の症状⑧泌尿器の問題
「膀胱炎のような症状がずっとつづいています。いつもトイレに行きたいような感じがしています。でも尿検査では感染症ではないということです」
「はじめて膀胱炎になったのは45歲でした。それ以来、何度も再発を繰り返しています」
「咳やクシャミをすると尿がもれます。こんな調子では、そのうらオムツがいるんじゃないかと心配です」
尿路感染症(膀胱炎を含む)の頻発や、腹圧性尿失禁(咳やクシャミ、笑ったときなどに尿がもれる)は、エストロゲンの濃度の低下から、外尿道の内側の組織が薄くなることが原因です。
少量のエストロゲンクリームを局所的に使うことで改善されることが多いといわれています。骨盤底体操も、その付近への血行をよくするので、尿失禁に効果があります。
更年期障害の症状⑨肌のトラブル
「ほとんどー晚のうちに肌がカサカサになったみたいです。とくに眼のまわりなんかはシワシワです」
皮膚のコラーゲン層もホルモン濃度の低下とともに薄くなります。
肌のトラブル対策
いまはいろいろな肌の手入れ用化粧品が出回っており、コラーゲンの増加、肌の若返り、しわの予防に高い効果をあげています。
合成ホルモンや、大豆のような植物エストロゲンの豊富な食品、あるいはビタミンCやビタミンE、グル夕チオン、プロアントシアニデイン(グレープシードや松の樹皮から抽出される)といった抗酸化サプリメントもコラーゲンをつくり、肌を若返らせます。
更年期障害の症状⑩骨量減少
「祖母は年々小さくなって背中もまるくなっていきます。私はあんなふうにはなりたくありません」
骨粗しょう症と呼ばれる骨の劣化は、30代のうちから(ときにはそれ以前から)多くの女性にひそかにはじまっています。
慢性的なダイエットや少食、運動のしすぎ、栄養不足、拒食症などのために10代、20代、30代で達成すべき骨密度(最大骨密度)を達成することができないと40代を迎えたときにはすでに骨密度が不足した状態でホルモンの変動の影響を受けることになります。
骨粗しょう症の対策
骨のコラーゲンを維持し、健康な骨をつくり直せる方法はいろいろあります。
大豆やハーブなどから植物ホルモンを補給するのもいし、ホルモン補充療法、カルシウムとマグネシウムのサプリメント、ウォーキングやスクワットなどの全身の体重が足にかかるような運動なども効果があります。
更年期障害の症状⑪気分の不安定
「テレビのコマーシャルを見て泣いていたり、わけもなくカッとなって、子供たらに当たりちらしたりします」
かつては月経前に起きていたような気分の揺れが、更年期にはもっと激しくなります。
いらだったり、暗く落ちこんでいったりする理由の一つはホルモンです。だがそれは、内なる知恵の信号かもしれません。何か人生の問題に、あなたの注意を引こうとしているのかも。
更年期障害の症状⑫不眠
「夜中じゅう寝つけません。寝たと思っても、寝汗やほてりで目が覚めてしまいます。熱くなって毛布をかけずにいると、こんどはものすごく冷えてしまいます」
寝汗とほてりが不眠の原因なら、その治療をすればいいですが、不安が原因のこともあります。
不眠対策
不安のせいなら、その不安が注目させる生活のどこかを変える必要があるかもしれません。
睡眠が妨げられるもう一つの理由は、更年期も思春期と同様に睡眠パターンが変化する時期だということです。なかには子供のころのように、急に長い睡眠時間が必要になる人もいます。
閉経後にまた変化し、20代や30代のときほど睡眠時間を必要としなくなるのがふつうです。更年期のあいだは昼寝が効果を上げることがあります。
更年期障害の症状⑬頭がぼんやり、もの忘れがひどい
「家の力ギをしょっちゅうなくす、何のために部屋へ入ってきたのか忘れたりもします。ときどき頭にワタでも詰まっているような感じがします」
更年期に入ると、もの忘れと、頭がぼんやりするという訴えがとても多くなります。
集中できなくなったり、携带電話を冷蔵庫に入れるといつたおかしなミスをすることもめずらしくありません。
同じような現象は出産にもよく見られ、生まれた赤ちゃんを家に連れてかえったお母さんは、ふいに家計簿の計算ができなくなったような気持ちになったりします。
更年期には、ホルモンの助けで脳がより直観的な夕イプに変わりつつあり、論理的な半球が、しばらく眠りについたかのように感じられることもあります。
物忘れ、ぼんやり対策
イチョウ葉、オトギリソウなどのハーブには頭をすっきりさせる効果があります。
大豆イソフラボンや、プロゲステロン、エストロゲンなどのホルモンが役に立つことも多いです。いずれにしても大事なことは、アルツハイマー病ではなくても更年期ではこの症状は起こるということです。
これらの症状はいつまで続く?
更年期障害がはじまると、この先ずっとこんなことが続くのかと暗たんとした気持ちになるものです。
ですが、実のところ、これは「産みの苦しみ」です。
私たちの生物学的な目的が生殖から自己成長へと切りかわり、それに伴ってホルモンが変化します。その変化への、いわば適応の過程です。したがって症状は一時的なものなのです。
症状がどれくらいつづくかは、閉経のタイプや、その人の人生の状況、心身の強さなど、いろいろな要因で変わりますが、自然に閉経を迎える場合は、だいたいは5年から10年が平均です。
症状は徐々に勢いを増していき、移行の中間点でピークを迎え、そして体が新しいホルモンの状態になじんでいくにつれ、徐々に鎮まっていきます。
更年期の症状は、すべてつながりあっているために、1つを治療すると他の症状も緩和されることが多いです。
効果的な療法がたくさんありますから、自分にいちばん合っていると思うものを選んでいきましょう。いくつかの療法を並行して行なうのもいいです。
たとえば従来のホルモン補充療法に大豆食品と、サプリメントと、運動のプログラムをくわえるといったことでも良いでしょう。