このページでは、更年期障害の主な治療であるホルモン補充療法「HRT」についてご紹介します。
HRTとはどんな治療法なのか、メリット(効果)やデメリット(副作用)はなんなのか、どんな人におすすめかなどを解説します。
目次
更年期障害に効くホルモン補充療法(HRT)ってどんな治療?
HRTは低下したエストロゲンを薬で補う治療法です。医師の処方薬で、飲み薬、貼り薬、塗り薬があります。
ホットフラッシュや膣の乾燥といったエストロゲン不足による症状に対する効果が高く、この点は漢方薬よりすぐれています。そのため、今すぐに症状を取って仕事に復帰したい人など、急いで治したい人の希望が多い治療法です。
更年期障害の症状以外に閉経後の骨粗しょう症や萎縮性膣炎の治療などにも使われます。どれも効果はエストロゲンによるものですが、エストロゲンを単独で使うと子宮内膜が増殖して子宮体がんのリスクを高めるので、これを避けるために子宮内膜を掃除する黄体ホルモンを併用します。
更年期のHRT投与法
投与法は基本的には大きく分けて「周期的投与法」と「持続併用法」の2つです。
「周期的投与法」は30日を1周期として、そのうち10〜12日間程度黄体ホルモンを併用して定期的に出血を起こす方法です。
もう一つの「持続併用法」。エストロゲンと黄体ホルモンを同時に使う「持続併用法」は子宮内膜を萎縮させて出血を避ける投与法です。始めてから半年程度は不正出血の恐れがあります が、事前にそれを知っていると、不安にならずに済むようです。
エストロゲン剤には、飲み薬以外にパッチ(貼り薬)やジェルがあります。近年はさらに用量の少ないエストロゲン剤や、エストロゲンと黄体ホルモンを1剤に配合した飲み薬とパッチも登場。薬の選択肢が広がりました。投与法の変更もいつでもできるので、ライフスタイルに合わせて医師に相談しましょう。
HRTのメリット(効果)・デメリット(副作用)
HRTのメリットとデメリットは以下の通りです。
副作用が出ることもあるので注意が必要です。
HRTのメリット・効果
- ホットフラッシュ、動悸などの不調を改善
- 血管壁を柔軟にし、悪玉コレステロールを減らす
- 骨粗しょう症を予防
- 肌のコラーゲンを増やす
- 膣などの粘膜や肌の乾燥改善
- 不足した脳内物質の働きを助ける
- 認知症を予防
- 抗酸化作用を保ち心臓病のリスクを下げる
- 大腸がんのリスクを下げる
- うつ改善
HRTのデメリット・副作用
- 月経のような出血(薬の種類による)
- 使用は5年以内
- 血栓症や脳卒中のリスク増
- 乳がんのリスク増
- 乳房の張り
- 胃痛
ホルモン補充療法(HRT)は更年期のうつ症状にも効果?
少なくなった女性ホルモンのエストロゲンを補う治療がホルモン補充療法(HRT)。のぼせや発汗などのホットフラッシュはもちろん、うつ気分の改善にも効果と言われています。
月経不順やホットフラッシュ、関節痛などとともに不安や不眠などのうつ症状も現れてきた人によく良く効くと言われており、体と心の不調を一度に治してくれるので、 更年期症状に悩む人にはメリットが大きいです。ただし、更年期の身体症状がなく、うつ症状だけという人にはHRTが有効でないこともあります。
抗うつ薬としてのHRTの効果には、否定的な報告のほうが多い。ただし、HRTを併用することで治療効果が上がるという「後押し効果」はあるようです。
ホットフラッシュなどの更年期の身体症状があって、気分も落ち込んでいるという人は、まずは婦人科で相談を、身体症状はないけれど、うつだけあるという場合は、心療内科や精神科で診てもらうといいでしょう。
HRTはどんな人でも受けられる?
これまでホルモン補充療法(HRT)はエストロゲンの減少に伴う不快な症状がある人の治療に使われていました。
しかし、2009年刊行の「ホルモン補充療法ガイドライン」では、リスクとメリットを理解して本人が希望すれば、エストロゲンの欠落症状がなくてもHRTが使える方向になりました。
これは、血管や骨の維持などに良い働きがあり、閉経後の女性のヘルスケアに有用な側面があるためです。
ただし、乳がんや子宮体がん、血栓症、心疾患や脳卒中、重い肝障害、妊娠の可能性のある人はHRTは使えません。
HRTが使えない人
- 乳がんや子宮体がん
- 血栓症
- 心疾患
- 脳卒中
- 重い肝障害
- 妊娠の可能性のある人
長く続けると乳がんになるかもって本当?
2002年に発表された米国の大規模試験では、HRTを5年以上続けると、乳がんリスクが若干上がると報告されました。
具体的には年間1万人当たり30人の乳がん発症が38人に増加するというもの。これを多いと考えるかそうでもないととらえる力は難しいところですが、5年以内の使用ならこうした問題はまず起こらないようです。
また、通常の閉経年齡より早い40歲未満の早発閉経でHRTを受け始めた場合は、5年以上続けてもがんリスクは増加しないと考えられています。
ただし、HRTを受けている間は念のため、誰でも年1回は乳がん検査を受けるようすすめられています。
家族に乳がんになった人がいるなど家系的にリスクが高い場合も必ず医師に伝えるようにしましょう。
HRTはどんな人におすすめ?
更年期のつらい症状が出ている場合、閉経後ならHRTが第一選択ですが、40代前半というのは微妙な年齢。
一般的には30〜45歳ごろまでの、まだエストロゲンが出ている場合の不定愁訴には低用量ピル(OC)、46歳以上でエストロゲンが減っている人にはHRT治療というのが目安です。
というのも、同じホルモン剤でも、低用量ピルに比べエストロゲンの作用が弱い。わずかな量を補うだけでも、エストロゲンが減って起きる更年期の症状は改善します。
でも、またエストロゲンが出ているなら微量なホルモンを補充しても効果を得にくいため、低用量ピルや漢方などHRT以外の治療をおすすめします。
まずは血液検査でホルモン値のチェックをしましょう。エストロゲン値が低く、卵胞刺激ホルモン(FSH)の値が高くなっていて、「とにかく今のつらさをなんとかしたい」という人な ら、閉経前の40代でもHRT治療は選択肢の一つといえます。
生活や家族構成で考える
ちなみに、HRTを選択する場合、年齢で区切るより、生活や家族構成などのライフスタイルを基準に考えるという方法もあります。
というのも「月経がなくなる=女でなくなる」と思い込んでいる人が多いからです。本当はそんな偏見は捨ててほしいのですが、出血の有無を重視する人は意外と多いです。「パートナーに更年期だと思われたくないから、月々出血があるほうがいい」という人が結構いるものです。
ですからあなたがHRTを選ぶなら、前述の月経のような出血を起こす方法 (周期的投与法)と、なくしてしまう方法(持続併用法)があることを知っておくといいかもしれません。
ちなみに低用量ピル(OC)は月経のような出血が起こります。HRTの副作用として、最初の うち、乳房の張り、胃痛などの症状が出る場合があります。
ただし、最近はジェルやパッチなど副作用の少ないタイプのHRTも出ています。また、嫌になったらいつやめても問題はありません。
最後に
以上、ホルモン補充療法HRTについて解説させて頂きました。
HRTのメリット・デメリットをしっかり踏まえたうえでこの療法を受けることが大切です。
辛い更年期障害に悩む方は多いものです。是非、ご自身に合った治療を見つけてください。
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