更年期になって、物忘れ、記憶障害が気になる方も多いのではないでしょうか。
また、更年期の物忘れが認知症ではないかと心配になる方もいるかと思います。
基本的には、更年期の物忘れはホルモンによる一時的なものであり、認知症の心配がないものが大半です。
しかし、一時的であっても物忘れは何かと不便なものです。つぎのようなことを実践することで脳の健康と記憶力の向上に役立てましょう。
目次
更年期の物忘れを改善する習慣
①脳に栄養を補給
更年期の脳の機能のためには、また体のあらゆる面の健康のためにも、果物や野菜や、全粒の榖物などを取り合わせた比較的低脂肪の食生活にしましょう。
研究によれば、痴呆とうつの患者には、亜鉛、ビタミンB群(ことにチアミンとも呼ばれるビタミンB1)、セレニウム、そしてビタミンEやCなどの抗酸化物質が不足していることが多いです。
たとえば亜鉛は、ビ夕ミンB群を脳脊髄液(脳と脊髄を浸し、栄養を与えている)へ送りこむのに必要な栄養素ですが、女性にはこれが食事から十分取れていない人がとても多いのです。
ある研究では、重い痴呆の患者のうち10人がビタミン剤を2か月間与えられ、対照群は何も与えられませんでした。1か月後にはビタミンを補充された患者に記憶力の向上が観察されています。
②活性酸素の害を防ぐ
脳の健康は、活性酸素の害に大きく作用されます。
したがって抗酸化物質の摂取が重要で、食事からビ夕ミンE、ビタミンB群(葉酸を含む)、セレニウムなどをたっぷり取らなければなりません。
マツの樹皮やブドウの種子に含まれるプロアントシアニジンも強力な抗酸化物質の一つで、ピクノジェノルという名の商品があります。
研究によれば、1日に少なくとも5皿分の野菜と果物を食べる女性は脳卒中のリスクが非常に低いですが、これは痴呆のリスクを下げたり、更年期の物忘れを防ぐことにもなります。
③タバコと過度のアルコールを避ける
タバコが心血管系の病気を起こし、毛細血管に作用して、とくに脳への酸素供給を減らすことはよく知られています。
また過剰なアルコールの摂取は、記憶に関係する前脳基部に作用します。
④脳のアセチルコリン濃度を上げる
脳のアセチルコリン濃度が低下すると、記憶力が低下します。
アセチルコリンの濃度を下げることが知られている薬物は避けていただきたいものです。睡眠や風邪やアレルギーのために使っている薬があったら、その成分にジフェンヒドラミンが含まれているかどうかを確かめてください。
また咳止めやカゼ薬に使われるデキストロメトルファンは、アセチルコリンにも影響するほか、物忘れや記憶力を損なう可能性のある他の抗コリン作用(副交感神経抑制作用)も持っています。
⑤プレグネノロン、プロゲステロン、DHEA
プレグネノロン、プロゲステロンなどの脳の神経伝達物質として働くホルモン群を摂ることは、エストロゲンと同様に脳細胞の樹状突起と軸索の分枝を促すことが知られています。
つまり、脳の働きを高める効果があります。
また、DHEAも脳の機能を保つのにきわめて重要な役割をはたすことが知られていますが、これを補うときは、まずはじめにDHEAの血中濃度を調べ、低すぎる分だけ補うようにします。
更年期の物忘れを改善するサプリメントと食べ物
つぎにあげるようなサプリメントや食物も、更年期の物忘れや記憶力に効果のあることが知られています。
試すときはそれぞれの効果が判断できるように、一度に一つずつにしましょう。
①イチョウ葉
イチョウ葉はヨーロッパでは最もよく処方されるハーブで、40例以上の二重盲検テストで効果が証明されています。
脳の血液循環をよくするらしく、脳の細い動脈の動脈硬化症による詰まりに対処するのに広く使われています。
更年期の物忘れ対策にも適しています。
②良質の脂肪
神経繊維はミエリンと呼ばれる脂肪でおおわれています。脳と神経の機能を良好に保つには、毎日の食事から少量の良質の脂肪(トランス型脂肪でなく)を取ることが必要になります。
オリーブ油やゴマ油を使う、サケやイワシなどの脂肪の多い魚を日ごろからよく食べるといつたことを更年期にはおすすめします。
サプリメントで脂肪を補う場合は、藻類から抽出されたDHA(ドコサへキサエン酸)を使いましょう。
③大豆
大豆の消費量がアメリ力よりはるかに多い日本では、アルツハイマー病や他の痴呆の発生がずっと少ないといいます。
大豆の植物エストロゲンが脳にエストラジオールと同様の、しかしそれほど強力ではない作用をおよほすことが知られています。また大豆は心血管系によいことが明らかなので痴呆にきわめてつなかりやすい脳卒中を予防することにもなります。
更年期の物忘れにも効果を発揮します。
脳の働きを悪くする物質
以下の3つの物質は脳の働きを悪化させます。更年期の物忘れや記憶障害にも影響を及ぼしますので、出来るだけ避けるようにしましょう。
①アルミニウム
アルツハイマー病の患者の脳にアルミニウムが発見されたことから、この病気が組織中の亜鉛とセレニウムの濃度の低下にくわえてアルミニウム濃度の上昇とも関連づけられています。
遺伝的にアルツハイマーの素因のある人には、アルミニウムが実際に脳に毒素として働くことを示唆する証拠があります。
したがって家族がその型の痴呆になった人は、アルミニウムの調理器具や、アルミニウムを含んだ脇の下用の発汗抑制剤、アルミ缶入りの飲料、アルミニウムを含んだベーキングパウダーなどは使わないようにしたほうがよいでしょう。
②アスパルテー厶
パルスウィートなどの商品名で売られている甘味料のアスパルテームは、細胞を刺激し興奮させる毒素になります。
敏感な人の場合、これが脳細胞の死につながることが考えられ、そこから一部の女性の多発生硬化症に似た症状の原因になるともされています。とくにダイエットコーラなどの炭酸飲料に使われていることが問題を大きくしているようです。
最近、炭酸飲料の中毒のようになり、栄養のあるものをろくに食べずに一日に何リットルも飲んでいる女性が増えているが、これは人により物忘れなどの以外にも、頭痛、めまい、不安発作、記憶の欠落、ろれつがまわらない、手足のしびれ、筋肉のけいれん、気分の乱れ、重度のうつ、人格変化、月経前症候群、不眠症、疲労感、活動過多、動悸、不整脈、胸の痛み、難聴、耳鳴り、目のかすみ、味覚の低下、皮膚病、吐き気、消化不良、水分貯留といった、じつに広範な神経症状につながっていきます。
こうした問題が起きたことがある人は、人工甘味料は避けるようにしましょう。摂取をやめるとアスパルテームによる症状は消失するといいます。
ちなみにハーブのステビアやスクラロースといった甘味料はアスパルテームより安全と言われています。
③SERM(選択的エストロゲン受容体調節剤)
卵巣ホルモンが脳の機能にはたす役割を考えると、抗エストロゲン剤のタモキシフェン(乳がんを予防する)やラロキシフェン(骨粗鬆症を予防する)は、長期的には全身的なエストロゲン不足をまねく可能性があるために、論理的に脳には危険だということになります。
この2つの薬の副作用が脳に悪影響を及ぼします。
夕モキシフェンはエストロゲンの乳房への作用を遮断しますが、脳への作用もいくらか遮断することがわかっていますし、骨粗鬆症を予防したい女性に使われるラロキシフェン(エビスタ)も脳に影響します。
だからこそ視床下部に仲介される「ほてり」がSERMの副作用の一つになるわけですし、うつや物忘れも数ある副作用の一つです。
SERMにはすぐれた特性もあり、ほんとうにリスクの高い女性には適切でしょうが、深刻な障害が起きる可能性に十分注意が払われていないのは問題です。